クロソイはその肝が美味しいことで知られる魚ですが、この魚を食べる際には寄生虫による食中毒のリスクに留意する必要があります。
この記事では、クロソイに見られる寄生虫の種類、調理方法によるリスク、「ゴマ」と呼ばれる黒い斑点の寄生虫、アニサキスによる食中毒の原因と対策について詳しく説明します。
クロソイの基本情報
クロソイは、カサゴ目メバル科に属する海の魚です。「ソイ」「スイ」「クロゾイ」「ナガラ」とも呼ばれ、平均的には約30センチメートルの大きさになります。
特徴的なのは、環境によって体色や模様が変わることです。名前の由来は、色と「ソ(磯)」「イ(魚)」から来ています。
料理方法は多岐にわたり、あら汁や焼き魚、天ぷらなどがあります。肝は味わい深く、あら汁にすると豊かなダシが出ます。
美味しいシーズン
クロソイが最も美味しいのは、11月~2月です。この冬の間に脂が豊富になり、味もより良くなります。
一年中漁獲されるクロソイですが冬季の味は際立っています。
生息地
クロソイの主な生息地は日本の北部(特に北海道や青森県)です。
香川県、長崎県、福岡県、三重県などで養殖もされていますが、これらの地域の生産量は比較的少なめです。
クロソイの寄生虫は有害なのか
クロソイにはいくつかの寄生虫が存在します。これらは魚の死後も内部や筋肉に残り、食中毒の原因になることがあります。
主な寄生虫には「アニサキス」と「吸葉条虫」があります。アニサキスは特に危険で、生食する際には腹痛や嘔吐、下痢などの食中毒症状があるため、適切な処理と鮮度が重要です。
一方でゴマと呼ばれる黒い斑点の寄生虫は人間に害はないものの、その特徴や影響を理解することは大切です。
クロソイの黒い斑点は寄生虫なの?見つけたときの対処法は
外見と特色
ゴマと呼ばれる寄生虫は、外見が黒ゴマに似ているためこの名がつきました。
学名は「リリアトレマ・スクリジャビニ」です。約1mmの小さな大きさですが、色が黒いため見つけやすいです。クロソイやアイナメ、ヤマハタなどの魚に寄生しますが、これらの魚では黒い斑点のように見えることが多いです。
「ゴマ」寄生虫の健康への影響
「ゴマ」と呼ばれる寄生虫は、人間が誤って摂取しても通常は無害です。これらの寄生虫は、人間の体内で生き続けることはほとんどなく、食中毒の心配も少ないとされています。
クロソイの寄生虫「アニサキス」によるリスク
クロソイに寄生するアニサキスは、魚が死んだ後も活動を続け、生で摂取すると食中毒のリスクがあり生食の際には注意が必要です。リスクのある調理法には刺身、寿司、たたき、なめろうがありますが、クロソイを凍結処理すれば、安全に食べられます。
生で調理する場合、刺身や寿司は高いリスクがありますが、たたきやなめろうはアニサキスを細かく砕くため、リスクは低くなります。
クロソイの肝とアニサキスのリスク
クロソイの肝は美味しい出汁の素として知られていますが、アニサキスのリスクがあるため調理には注意が必要です。加熱することでアニサキスは死滅し、食べる際のリスクが減少します。
十分な加熱をするあら汁などは安全ですが、加熱が不十分だと生焼けの状態になり寄生虫が残る可能性があります。
アニサキスが引き起こす食中毒
食中毒の発生メカニズム
アニサキスによる食中毒は、胃や腸で強い痛みや吐き気を引き起こすことが知られています。
これは、アニサキスの幼虫が消化管の壁に侵入し、炎症やその他の症状を引き起こすことによります。
アニサキス感染の症状と発症時期
アニサキスが胃の内壁に侵入すると、胸の下で激しい痛みが発生します。痛みは主に胃か腸に現れ、特に胃で痛みが生じるケースが多いです。
胃への影響(一般的)では、食後数時間から数十時間後に胸の下の激痛、吐き気、嘔吐が起こります。
腸への影響(まれ)では、食後数十時間から数日後に激しい痛みや腹膜炎の症状が現れることがあります。
消化器外のアニサキス感染(非常にまれ)では、アニサキスが消化器官を突き破り、他の体の部分に移動することがありますが、これは極めてまれです。
アニサキスアレルギーでは、通常無害なアニサキスが腹痛やじんましんなどのアレルギー症状を引き起こします。
アニサキス感染のリスクはどの程度?
ある研究によると、アニサキスによる症状が発生するリスクは宝くじに当たる確率と比較されるほどです。
この確率は、年間のアニサキスによる食中毒報告数や、国民が週に1度刺身を食べると想定して計算され、約7,000件と推定されています。
アニサキス感染の確率は、全国民が年間50回生魚を食べた場合に、年間7,000件の発症から算出されると、約1/90万の確率となります。
アニサキスを予防するための6ステップ
アニサキスによる胃痛や下痢を防ぐため、以下の6つのステップを踏むことが推奨されます。
- 購入する魚の新鮮さを確認し、内臓を速やかに取り除く
- 肉眼でアニサキスの幼虫の有無を確認
- 食事中はよく噛む
- 刺身や寿司などの生食は控える
- 魚を-20℃で24時間以上で冷凍
- 魚を70℃以上で加熱
鮮度、加熱、冷凍はアニサキス予防の重要なポイントです。加熱や冷凍によってアニサキスが死滅し、死んだアニサキスは体に害を及ぼしません。生食は美味しいですが、一度冷凍することで安全に楽しめます。
また、アニサキスが死滅する温度を知り、生焼けに注意することも大切です。
アニサキスの無害化方法
アニサキスを無害化する方法として、冷凍と加熱が効果的です。
【冷凍による無害化】
-20℃以下で24時間以上冷凍することにより、アニサキスは完全に死滅します。
これは、低温で長時間処理することにより、寄生虫を安全に除去する方法です。
【加熱による無害化】
アニサキスの加熱処理も効果的です。70℃で加熱するか、60℃で1分間加熱することで死滅します。
総括
クロソイには主にアニサキスとゴマという二種類の寄生虫が存在します。アニサキスは生の状態で摂取されると食中毒に似た症状(腹痛、下痢、嘔吐など)を引き起こしますが、ゴマは万が一摂取しても通常は人体に大きな害はありません。
クロソイを安全に食べるためには、冷凍していない生の料理形態(例えば刺身や寿司、たたき)を避けることが推奨されます。
クロソイにはアニサキスの寄生が見られることがありますが、通常は魚が生きている間にその内部に潜んでいます。アニサキスは冷凍処理により無害化されるため、生で食べる際はこの処理が必須です。
一方、ゴマという寄生虫は体への害がほとんどなく、見つかった場合は冷静に対応するだけで十分です。